進化 – Dreaming Egg

ぐるりぐるりと、不安定な球体の中で僕は回っていた。
液体の動く音が僕たちの音と混ざり合って聞こえる。渾沌ってきっとこんな事を言うんだと思う。
僕たちはいつも会話をしている。話し相手の心音が言うには、この世には、生きる権利のあるものと、そうでないものがいるらしい。
権利があるものは、最期まで生き抜く事が出来て、そうでないものは、途中で消え去る。それが、自然の淘汰というものなんだって。
僕は、最期まで生きれるかしら?
くるり、と心音が弱まる。
どうも、僕は欠陥品らしい。脈が弱いみたい。回っている事は回っているんだけど、あんまり早く回る事が出来無いし、たまに回り方がわからなくなって、止まってしまう事もあるから、どこかおかしいのかも知れない。
じゃあ、出ない方がよいのかな。とも思う。けれども、どうも液体とは別のカタチはそれなりにあるみたいで、境界面ははっきりとしてきている。
心音。と僕は呼びかけた。そして、ちょっとの間だけくるりくるりと少し早めに回ってみる。
-なに?
-僕、どこまでいけるかな?
-ずっと途中だと思う。皆みたいに遠くへは行けない。それだけは、ごめん…確かな事なんだ。
-でも、このままここで止まりたくない。
-その先、歩いていける?ずっと独りだったとしても歩いていける?あなたは辛い目に遭う。それでもいい?
-どうだろう。その時は心音、どうなるの?
-聞こえなくなる。そしたら、ふたりとも、いなくなる。
-いなくなったらやだなあ。
-その時は考える事も出来ないから、哀しくも何とも無いよ。それが救い。
-ねえ、心音。ここから出ても、きみはいるんでしょ?
-いるけど、今みたいに話したり出来無くなる。
-でも、そばにいるんでしょ?
-一番近くにいるよ。あなたが気付けないくらい近く。
-心音がいたら、大丈夫だよ。途中まででも外に出て、回ってみようかな。
-外に出たら、回るんじゃなくて、歩くの。
-あるく?
-そう。頭とは反対方向に歩くための脚が出来る。その脚というもので動くんだ。脚だけで歩くには、少し練習がいるけど、覚えたら今回ってるくらい、当たり前の事になる。
-そうなんだ。だからどんどん、違うカタチに変わっていってるんだね。
-本当に、いいね?
-いいよ。
心音はちょっとだけゆっくりと鳴った。今までの様に一緒にいてくれるのに、どうしてそんな風に哀しそうにするんだろう。
そして、次には強く、大きく音を立てた。
-ほら、時間が来た。この球体から出るんだ。思いっ切り、ぐるりと回って、外に出るんだ。最後に…。総てを信じて、信じて、最期まで信じるんだ。僕はその部分に存在してる。君に祝福を!

-じゃあ、いくよ。いち、に…

2012.03.29 |  Short Short Story | Text |  緋衣那 充希

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