希望は絶望よりもなお深い場所に在る

長い影法師
その心臓に短剣を突き刺す
いつも的は外れて、
影はにやりと口を歪ませ
けたたましく嗤う

骸骨とダンス
死は延長線上に遠ざかる
何度も望み焼き焦がし
傷は深まれど
絶対値、近付けはしない

螺旋階段、だまし絵
天高く、下っていく
足踏みしているだけ
その足は無いのだから
どこにも行けない

この身体さえ、虚構か
存在はアンデット
遠ざかる自我
剥離浮游する現実
片輪では掴めぬ

すべてのものに、
この意識自体に
騙されている

影が体に顔にへばり付き
頭の中、蠢く
皮膚の上、甲高く、
眼球の奥、ノイズが、
悲鳴が、俺か
手と腕が激しく捻じ曲がる

穢れの色流れ、落ちて
水溜りが嘲笑い揺らぐ
声無き幻聴
腕這うヒュドラ

焼き切れろ
不仕合せな脳が右へ左へ
体が波打ち、重力に、鈍い音
開いた口から、メロディが
流れていく、壊れていく

腐敗の気配、唇に感じながら
瞼が重くなる
果てるだろうか
鉛のヴェールに包まれる

泥水が沈殿していく様に
激しく対流する思考が
止まればいい
耳に刺さったままの悲鳴
全身を殴りつける暴言
不自由な片腕の痙攣、が
きれいになるだろうから

まっさらな、
天使が舞い降りた様な
純白には、成れやしない
生まれ落ちたものの宿命
赤黒く染み付いている

朱に染まる夜

闇夜の果て、最果て
現れるのは、朝焼け
厭いた刻
神の足跡
機関の秘密
ファウストの契約
メロディは、開いた口から
流れている、奏でている

残ったのは、
廃した身体
現実
生き残った自我

EUREKA

その時俺は、
狂った様に、叫ぶ様に、
笑った

諦めよりも深く
死よりも遠い場所から
這う様に訪れる
遅きもの
お前の名は希望

口から流れるメロディに
この身を委ねよう
いつまでも、どこまでも
続いていられる様に
あまりにも歩みの遅い希望を
待っていられる様に

2014.04.28 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

アンソムニア

今夜も頭は低速回転
瞼よ重くなれ
文字で遊んでも
砂男を呼んでみても
摩擦音がうるさくて
JOURNAL「SLEEPLESS」
数え唄線を引く

瞼を閉じ眠りに落ちる日は?

時計が天辺過ぎても
天使は頭上で跳ね続ける
そのステップを聞くと
地下室から「よい夜だね」と
血に塗れて微笑う
君が現れそうで
手が伸びて、空を切る

混沌の海から君を救えない

意識は無意識を拒む
水面を揺らいで
また今夜も目を開いたまま
怪物の様に横たわる
真夜中の墓所の庭は
太陽の下を歩く悪魔の寝床

赤眼の男が柩に入り込む頃
俺は閉じかけの目を開ける
絶望へ光が差し込み
闇は本領を見せる
その奥に君の姿があれば
希望はこの手に遺ったかも知れない
腕には死と呪の文字が
刻まれたまま、消えない

生なる命の檻に囚われの幽鬼

ルシファーが西の空に現れる
眠れぬ夜の苦悩を笑い喰らう
彼に魅入られた俺は
黒き翼を手に入れる為
アレとソレを四錠飲み込み
偽りの眠りに落ちてゆこう

2012.09.29 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

舞宵夜

欠けた月が照らす夜
父の手に引かれて歩く坂道
仄かに灯る提灯は
風にゆらりゆら

酒の香りがする
右手を繋ぐ指先体温
見上げた父の顔は
袖で見えない

夜風はすっかり春めき
月の光もやさしい紗の様
誰もいない山の上の境内
桜はまだ咲き誇る日を
待ちわびて眠る
柏手打てない僕は何を願おう

縁側、月夜に片手酒
薄紅の花がまろく香る
盃に今宵の肴を映し、
過去を脳裏に映す

父よ、
俺も酒が飲めるようになった
皮肉なもんじゃないか―
目を伏せ昏く笑う

…赦しておくれ

狛犬の足元に泣いた父の顔
子供は諦めに似た眼差しを向ける
願ったのは、
苦悩の種で在り続けるのなら
この隻手の子を葬って欲しかった
弱いものは闇が浚ってゆく
現世の定律を識る片輪の少年は
絞首台に立ち宣告を受け入れる

風が悲しく鳴き叫び
魔が過ぎ去る
彼の手が顔に触れ
抱きすくめられる
体に伝わる嗚咽と懺悔
少年は境内に無垢を落とし
人形の様に虚を見上げた

俯いたままの父の顔には
幾筋もの涙の跡が残ったまま
手を引かれて歩く子は
鋭く感情を失くした表情で
泣き顔を見ていた
弦月は漆黒の奥へ沈み
春風が少年の頬を撫でた

ごめんなさい…

父よ、
隻腕でも、それでも、何とか生きている
完全な自由とは言わないが、
少なくとも不自由では無い

心地良い風が天空を示す
目に触れる月と花は
今もなお輝く
その気高き在り様に
俺は心を許し微笑む
冥き迷い世に乾杯
未だに酒に酔う事を知らず
過去と共に盃を空ける

2012.04.28 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

拒食症

喰らわねば、生きられぬという
吐き気をこらえながら
フォークを手にし
味もわからぬ塊を口に含む

嚥下したものを吐き出す

言葉にならぬ悲鳴
鈍い金属と骨の音
皿は床へ落ち割れた

何故こんな行為を繰り返すのか

青白くなった頬
唾液まみれの顎
嘔吐を拭う腕

テーブルにフォークを突き立てる

幸福な食卓?
ふざけるな。

2012.03.29 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

無拍

さあ火を与えよう!
夜暗すら焦がす輝かしい炎だ
憂鬱は光に照らされ
暗さを増す

きらめく神の台座を占める
かの名は虚無という
システマティック・メカニズム
キミはただのカートリッジ
悪魔は高笑い

孤独なライプニッツ
救われないカント
ソコで終わりたくない!
わかるだろう?
この世は夢幻で掴めない
カレの夢の中かも
地面へ落下する僅かな時間の中
何ものかが誑かしていても
僕は世界を信じよう

踏みしめ考えた世界は
ただ、ここに在る
微分された最期まで
悪魔-と-踊れ
理性-と-闘え

2012.03.18 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

MID-NIGHT HI-WAY LOW-PASS

身体の克服
人体 シリコン
むき出しの激情

幻覚か妄想
薬 ドーピング
正常である事の狂気

人間という価値の脱落

思考 電気 パルス
身体 移植 電脳化
意味 一体化 幻想

理性による陵辱
JUSTICE IS POWER
エゴ エコ システム

人間の不在

全ては当然に循環する曲線

2011.12.25 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

鉤爪 – A DAMP NIGHT

濡れそぼつ夜に怪物ひとり
尖る爪を弾いて数える
孤独な夜と塞がれた朝

いつか太陽の下飛び出して
砕け散ってみせようか
光に潰される最期は
淡い憧れ

涙も忘れた夜に怪物ひとり
尖る爪を腕に突き刺して
真っ赤な血と忘れた痛み

何度目だろう
朽ちた地下への階段
きみを求めて腕を伸ばし

光届かぬ地下に怪物ひとり
尖る両手を組み合わせ
神の裁きを待っている
流れる唄と忘却の時間

2011.11.15 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

たそかれとき

夕暮れ町の三丁目
なんてありふれた夕暮れだろう
公園では子どもが駆けはしゃぎ
路地を車がすり抜けていく

区画整備碁盤の目
一軒家アパートがひしめく
カーテン閉じたままの部屋
門灯の点いた家
夕食の準備テレビノイズ

なんて平凡な夕暮れだろう
僕は夕日に向かって歩いてみる
人の生活って素敵だね
夢見た日常、溢れた感情

落ちて、墜ちた、無音の視界

「長く伸びた影」
「個別なる実際」
「もういいかい」

2011.10.08 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

祈りの形 At Café

駅前のコーヒー店
奥の丸テーブル
白いマグカップ

目を閉じて
コーヒーを飲む

舌に広がる苦味
鼻に抜ける香り
この感じがよく似てる

目を閉じたまま
君を待つ

こういう感じだったっけ?
「   」って。

感覚が消え去る頃
君の横顔が見える

いつも思うけど、
不思議な表情だね
せめてその顔が
泣き顔じゃなければ
そう望う

こうして僕は
一杯のコーヒーに
君を想う
墓標が無くとも
日常のどこにだって
君がいる

コーヒーを飲もう
手向けの白い花束
その代わりだ

2011.03.06 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

残夏

全てを振り払う強さを

愛という単語一つ
音にする事は易く
愛する事は難しく

飲み込んだ苦い潮
目を閉じて見る闇は
消えず離れずへばりつく

君と笑う夏は
蝉の音と共に消え去った

夕立は悔恨の涙浚い
瞳の奥へ孤独を落とす

付かず離れず離れられず

想うだけは易く
伝える事は難しく

振り払えない弱さよ

2011.02.10 |  Lyrics | 掌編 |  緋衣那 充希

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