Poème En Prose015

「そう、鏡があるとすれば、鏡に映った僕は、いつも独りなんだ。こちら側にいる僕は、君といる。けれども、向こう側の僕には君は居ない。だから、彼はいつも哀しそうなんだ」
「何故、私が映らないの?」
「それは…。君は僕よりもずっと頭がいい。だから…。これ以上は、僕も哀しくなる」
「ごめんなさい。今のは私が悪かった」
「彼は、とても哀しいんだ。だから、彼が哀しいと思うならば、僕達は少しでも楽しそうに笑ってあげたいんだ」
「あぁ。一つの理想の形を見せてあげたい」
「それで、悲しくなる事もあるんだけど」
「そうね。暖かなものって相対的に冷たいものをより冷たくする」

「私が手を繋ぐ時、あなたはいつも哀しさで手が冷たいのね」
「冷たいのが判ってて君は手を繋いでくれるんだろう」

2011.06.10 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose014

「あなたはそれを怖れている」
「…あぁ」
彼は普段では考えられない程弱々しく頷いた。
「これだけは、どうしても…。それが二十年間黙っていた総ての理由だ」
彼は苦悶に近い表情を作った。
「今でもまだその影は残っている」
「大丈夫」
彼女は立ち上がると、彼の傍に座った。
そして、彼の顔を両手で包み込んだ。
彼は素直に彼女の手を受け入れる。
もう決してそんな事は無いだろうとお互いが思っていた事だった。
二人は自分の目に映る顔をじっと見つめ合う。
こんなにも二人の顔が近付いたのは、彼の言った通り二十年ぶりだろう。
彼女は慈悲深い彼の瞳が好きだった。
彼は彼女の包み込む様な口元が好きだった。
目元や口元には以前には無かった-歳を重ねた-跡があったが、それは、老いていく中でも美しさを損なう事無く、その歳相応の美しさを引き立てていた。
「大丈夫」
再び彼女は呟いた。
「私はあなたを愛している」
再び彼女が美しい笑みを作ると、彼は安堵した様に瞳を閉じた。
「有難う…」

2010.07.11 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose013

「遠くに行ってみたいね。もっと綺麗なものがありそうじゃん」
「…。馬鹿ねえ」
彼女は顔に掛かった髪の毛を手で払うと窓を開けた。
そして、狭いベランダに出て、空を見上げる。
「今日は良さそう」
ぽつりとつぶやくと部屋の中にいる彼の方へ体を向ける。
「夕暮れ、金色に輝く獅子のたてがみを思わせる雲」
彼女の黒い髪の毛は光に輝いていた。
「風に吹かれて今にも空高く飛び立とうとする綿帽子。闇を越えて力強く産声を上げる東雲、紫の空。あなたは見た?」
「どこで?」
「ここ一週間、生活している中で。朝方ぐっすり寝てるあなたには最後のは無理か」
「…参った」
「ボン。夕方、散歩に行こう。河川敷を歩きたい」

2010.06.18 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose012

「何をしてるの?」
「あぁ…、きみか…」
「からだが冷たくなってるわ。傘を持ってなかったの?」
「この通り手ぶらだし、ずぶ濡れだからもういいよ」
「だめ。からだに障る。持って。あなたの方が背が高い」

「きみの手、温かいな」
「当たり前でしょ。帰ったらからだを温めないと」

2010.06.08 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose011

世界は願っても輝かないわ

その手の中にある光で
世界を照らしなさい

2010.05.09 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose010

「あなたは何を見てきたの?」
「伝えてみて。言葉でも、絵でも何でもいいから。見てきたのなら、欠片でも伝える事が出来るでしょう?」

「ねえ!あなたはその目で何を見てきたの?」

2010.04.28 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose009

「空が高く見える」
「高い」
「なのに」
「僕は…」
「僕は」
「こんなにも地面を這いつくばってる」

「何て遅いの!」
「重くて鈍い!」

「もっと!速く!高く!さあ!」

2010.04.21 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose008

彼女が微笑んだ
その事によって
僕は総てを開放される

破顔、一笑
美しき混沌!

「僕は与えよう、君に」

2010.04.18 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose007

「まずは、上を向く事ね」
「上ってどこ?」
「それはあなたが好きに決めていいわ」

「あなたの好きなところを上にして、そこを目指せばいいの」

2010.04.15 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

Poème En Prose006

「何て確率だろう?」
「状況としては偶然でもない」
「けれども、」
「そう、けれども」

『物語そのものだ!』

彼も僕も笑った。

2010.04.11 |  Poème En Prose | Text |  緋衣那 充希

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